検診よりも大切なこと(長いよ) ※読んでもらいたいばっかりに、ツイッターもとうとう貼り付けちゃった!

 近藤誠さんの著作に「がん検診、百害あって一利なし」という文がある。

 私の記憶では単行本のタイトルのような気がしていたので、amazonなどで検索したが見当たらなかったので、何かに発表された小論文のタイトルだったかもしれない。だが、amazonを覗いた際、「患者よがんと闘うな」の紹介文にも引用があったし、「・・闘うな」には、このフレーズを見出しとした章もあるから、この「がん検診、百害あって一利なし」というのは近藤さんの主張の骨子の1つであることは間違いない。がん検診率を上げようと躍起になっている人たちからすると、とんでもない言葉、ということになるのだろうけれど、やみくもにがん検診を受けたって、検査による弊害のリスクを負うばかりで、受診者にとって確実なメリットは何もない。逆に、医療側にとっては「収益」という確実なメリットがあるけどね。

 たとえば、私は現在57歳だから、がん検診を受けてもおかしくない年齢だし、がんが起きるかもしれない、と気になる部位がないわけではない。父が大腸がんだったし、30代で良性疾患だがホルモン依存性の病気をしているから、大腸がんや乳がんはどちらかといえば、気にはなる。だが、現在のところ私のおつうじはすこぶる快調で、一時のような「痔」もどきの症状も一切ない(これも、運動やらマラソンやらを始めた効果と実感してます)。そんな私が、果たして「大腸がん検査なら便をとるだけですよ、リスクなんてないじゃないですか」と言われても、する必要があるだろうか?
 乳がんなら、折にふれて自己検診しているから、これも必要を感じない。からだにはほかにも色んな部位があるし、たとえばあっついものを急激にのみこんだことがあるから咽頭がんだって可能性はあるだろうし、女性のがんの中で実は胃がんは多い(何年か前、乳がんがとってかわる前は胃がんが女性に多いがんの1位だった)から、これも可能性としてはほかの部位より高いかも。
 だが、「可能性」ということで言ったら、どんなに珍しいがんだって、私でも誰でもかかる可能性はゼロじゃない。10万くらいかかるPETという検査をすると全身のがんを調べることもできると言うけど、微細ながんを見つけてしまってビクビクしたりなんてナンセンスだし、そもそもPETだって万能じゃない。結局見つけ切れなかったり、そのとき見つからなかったって、その検査から1年後、発症する可能性だってあるだろう。

 やっぱり、どうあれこれ考えても、何の自覚症状、気がかりのない者まで対象にして「がん検診に行きましょう」というスローガンをマスコミやら医療関医者が言ってるのは、ややヒステリーとは言い過ぎかもしれないが、過剰としか思えない。よく言われるのが欧米の検診率と比べて日本は低すぎる、というやつだが、じゃあ日本のがん検診率が低すぎてるために、欧米のがん罹患率やがんによる死亡率と比べて極端に日本人のほうががんの発見が遅れており、死亡率も高いのか、と言ったら、決してそんなことはないのだ。

 何でもかんでも先進国のやり方が正しいのかと言ったらけっしてそんなことはない、とみんな分かってきてる(原発もしかりですよね)のだから、がん検診スローガンに、負けちゃダメだ、と私は思う。

 でも、そうすると、おそらく次に投げかけられる言葉は、病気にかかるより、病気が重くなるより、早く見つかったほうがいいでしょってやつだ。私だって、そう思う。その足をひっぱるものは何か。けっこう長いこと医療に関する電話相談を受けたり、仕事でも医療ユーザーの取材をしてきた私が思うには、足をひっぱっているのはがん検診率の低さなんかじゃない。人は「もしかしたら私の今のからだの状態は尋常ではないかもしれない」と思うと、逆にずるずると受診を先延ばしにする傾向があるのだ。頭の中で理解している「早期発見したほうがいい」というロジックと、「宣告を受けるのは厭だ」という感情が共存しているのが、やや大げさに言うと、人間てものなのだ。

 だから、私が「検診よりももっとずっとずっと大切なこと」だと思うのは、自分のからだに明らかに起きている異変に気付いているのなら、そのときこそ勇気をふるって、「ここぞ」という医療機関、医者を探して、行くことだ。さらに付け加えれば、そのときに医療機関で受けた検査の資料はすべて手に入れ、セカンドオピニオン、場合によってはサードオピニオンを得ることだ。
 そんなふうに、適切な受診行動をスローガンしていけば、人はもっと幸せに生きられるし、医療費は抑えられるし、国民にとっても、国の経済にとってもハッピーなことだ。だからさ、「調子の悪さを見逃さずに受診」して、検診なんて、行くのやめましょ。

 ちなみに、唐突になぜこんな文章を書きたくなったかと言えば、医療ポランティア活動をしている旧知の人が、日本のがん検診率が高くならないのは、近藤誠さんのがんもどき理論の影響ではないか、といった仮説に基づく文章をWEB上に発表しているのを読んで、笑ってしまったからだ。私もあのまま医療のはじっこで市民活動を続けていたら、反発はしても「そうかもしれない」と納得してしまったかもしれないけれど、まったくの部外者になってかつていた世界を眺めていたら、近藤さんの名前なんて知らないひとのほうが圧倒的、とつくづく実感した。もちろん、近藤さんは今も昔もオピニオンリーダーの一人には違いないから、名前を知らない人が多くたって、その主張が社会に与えている影響はそれなりに大きいと思う。だけど、がん検診に消極的な人が多いのを、近藤さんの影響、と決めつけてやり玉に挙げるのはあまりに短絡的だし、そもそも根拠がない。がんもどきは、食べたことはあっても読んだことない聞いたことない、という人は、影響の受けようがないよ(笑)。

 今話題の大野更紗さん(この方のことはそのうちにまた・・)の言じゃないけど、今の世の中、「難」をかかえた人ばかり。簡単に言うとお金のない人ばかりなんだから、自覚症状もないのに、たとえ少額でもお金を払って、自分のウンチを検査に出そうなんて人は、増えないに決まってる。そして、それは決して悪いこととは言えない。だけど、お金がない、プラス将来への不安はとりあえず見て見ないことにしたいから、自覚症状があっても検査に行かない、という人も、きっと少なくない。こっちのほうがむしろ大問題だ。かくして、がん検診スローガンは何の役にも立たず、不適切な受診が多い現状も変わらず、今のままじゃ、適切な受診は増えないし、医療経済はゆがんだままだ。

 も一つ、ちなみに、「適切な検査」ということについて、医療側は現在どんな情報提供をしているのかしら、と検索していて、行きついた国立がん研究センターのサイトの文にも、私笑っちゃいました。書いてある見出しはたとえばこんなふうです。
 1.効果のあるがん検診
 Q1どのようながん検診を受けたらいいですか。
 Q2がん検診として、効果が不明ということはどういうことですか。
 Q3精度の高い検査が、がん検診として効果があるといえますか。
 Q4検診料金が高い検査が、がん検診として効果があるといえますか。

 これ見たら、ほーほー、読んでみたい、と思うでしょ?
 ところが、ぎっちょん。奥歯にものがはさまったような内容で、結局何を言いたいんだか、さっぱりわからない。「科学的な方法により、がん検診として効果があると評価された検診を受けることが望ましい」と書いておきながら、どの検診がそれに該当するのか、具体的なことは一切書いてない。まるで禅問答のようなQAページでした。


(ふっふっふ。珍しくこんな文を書いたら、おー、私の書いてること、けっこう的を射てるじゃん、と我ながら思ってしまった。もっとちゃんとした媒体に発表しちゃったりして!?)・・・(がん検診は肯定的に見てるのになぜ受診率が低いのかは、単にお金の問題だけではないのか、そもそも今一般人がPETではなくふつうのがん検診を受けるとしたらどれくらいの費用がかかるのか、もっとインフォメーションが行き届いたら人はほんとはがん検診を受けたいのか、考えだしたら気になることはたくさん出てきた。ほんとに大真面目に調べてみようかしらね・・)

追記:長くなったついでに。大野更紗さんの「困ってるひと」はやはり売れてるようで、ただいま在庫切れらしい。よかった、よかった。だけど、いったいどんな本? 今すぐ読んでみたい、という人はこのサイトで読めます。実は、私の中でいまプチ落語ブームが起きてまして、スカパーで知った柳家喬太郎の情報を探していて、このサイトに行きつきました。これだから、WEBのメディアミクスは面白いですねえ・・。
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by yuuko_watanabe3 | 2011-09-25 16:50 | 更年期/からだ/こころ

わたなべゆうこです。blog名を「女は51から」より変更しました。


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